KG Club Note T
回るコマ、広がる笑顔
今年度は、「青少年の科学教育の普及・啓発活動」をテーマに、さまざまな活動に取り組んできました。その一環として、昨年6月、KGCボランティア活動で社会福祉協議会にて、「お孫さんと科学的なおもちゃで遊ぶための科学工作教室」の出前講座を開催しました。
当日は、高齢者の皆さんが〈ベンハムCDコマ〉や〈ニュートンCDコマ〉の科学工作に熱心に挑戦され、完成後にはCDコマの回転時間を競う、楽しいミニミニ大会も行いました。スタッフの方による明るく丁寧な司会進行のおかげで、会場は終始なごやかな雰囲気に包まれ、「身近な科学」と「コマの回転競争」を笑顔で楽しむ時間となりました。年齢を問わず、誰もが、どこでも身近な科学に触れ、楽しめることは、日々の暮らしをより楽しく、心豊かなものにしてくれる第一歩になります。(2026.02.28)
理科のその先にある未来
―TIMSS2023が示す課題―
理科は好き。でも将来にはつながらない――そんな子どもが少なくありません。
国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2023)では、「数学や理科を使うことが含まれる職業に就きたい」と答えた日本の中学2年生は27%にとどまり、国際平均の58%を大きく下回っています。この結果は、理科の学びが将来の進路と十分に結びついていないという課題を示しています。「理科を使う職業」と聞くと、科学者や研究者、医者を思い浮かべがちですが、実際にはエンジニア、データサイエンティスト、環境や食品の専門家、医療技術者など、多様な職業が理科と深く関わっています。
KGC科学教室では、科学工作や実験を通して、学校で学ぶ理科が社会の中でどのように生かされているかを伝えることも大切にしています。理科の世界を広げることは、子どもたちが理科の学びを「自分の未来」と結びつけることにつながり、未来の選択肢を広げる第一歩になると考えています。
・TIMSS2023の調査結果
研究者の仕事が見えてくる一冊『目指せ!科学者5』
本書では、科学技術の発展に大きく貢献した研究者に贈られる「向井賞」を受賞した2名の科学者を取り上げ、日本の最先端研究をわかりやすく紹介しています。
また、研究者を目指す学生に向けて、大学の研究室の様子や先輩からのアドバイスも掲載されており、「理系に進んだその先」を具体的にイメージできる内容となっています。さまざまな分野で活躍する研究者へのインタビューも収録されており、進路を考える中学生や高校生にとって大いに参考になるでしょう。
本書の中で特に印象に残ったのは、研究職の役割を次のように表現している点です。
大学の研究者は「0を1にする」
企業の研究者は「1を10にも1000にもする」
公的研究機関の研究者は「それが本当に1なのか、10なのかを確かめる」
それぞれの研究者が果たす役割の違いを、具体的な研究事例を交えながら理解できる構成になっています。
理科が好きな人はもちろん、これから進路を考え始める中学生・高校生にぜひ読んでほしい一冊です。
(出版:2025年12月7日)
「好き」が未来をつくる『目指せ!科学者4』
本書では、「教えるのではなく、『科学はおもしろい』と感じてもらいたい」という理念のもと、長年にわたり科学普及活動を続けている団体の取り組みが紹介されています。
さらに、世界の最前線で活躍する研究者の研究内容や研究室訪問、学生へのインタビューなども収録されており、理系を目指す青少年が将来の自分の姿を具体的に思い描ける内容となっています。
研究者インタビューには、心に響く言葉も数多く掲載されています。東京都立大学の井上晴夫教授は、次のように語っています。
「興味が持てることを一生懸命やること、それが一番ですね。…欠点があっても、自分の好きなところ、得意なところをどんどん伸ばしていけば、その欠点は目立たなくなります。本当に好きなことを、人の目を気にせず、とことんやってほしいと思います。」
この言葉からは、研究者になるために最も大切なのは、知識や才能だけではなく、「好き」という気持ちを大切にし、それを伸ばし続ける姿勢であることが伝わってきます。
理科が好きな人はもちろん、これから進路を考える中学生・高校生にぜひ手に取ってほしい一冊です。
(出版:2025年6月)
〇火星着陸が生んだ未来の科学者 ― オポチュニティとアビゲイル・フレーマン
2004年1月24日、高校生だったアビゲイル・フレーマンは、NASAジェット推進研究所(JPL)に招待され、火星探査機オポチュニティの着陸の瞬間に立ち会いました。無事着陸を知らせる信号が届いたとき、管制室に広がった緊張と歓喜。その熱気を、彼女は直接体験したのです。
第14回科学教室でもNASAの映像を通して、同じ瞬間のスタッフたちの興奮を感じましたが、彼女はまさにその現場にいた一人でした。この体験が、彼女を惑星科学の道へと導きます。
その後、ワシントン大学セントルイス校で地球惑星科学の博士号を取得し、火星地質学者として研究を重ねたのち、JPLへ戻ります。そして、かつて着陸を見守ったオポチュニティの科学チームを率いる立場となりました。
現在は、火星探査車キュリオシティの副プロジェクトサイエンティストとして活躍しています。
彼女の原点には、タコマ・パーク中学校やモンゴメリー・ブレア高校で出会った理科やコンピュータサイエンスの先生たちの存在がありました。そこに、この特別な体験が重なったことで、科学への興味は「好き」という気持ちから、「将来の志」へと変わっていったのです。
【さらに詳しく】
☞ 「アビゲイル・フレーマン」
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〇オポチュニティ火星着陸 ― エアバッグで跳ねた探査車
2004年1月、火星探査機スピリットが1月3日に、そしてオポチュニティが1月24日に火星へ着陸しました。2機は「双子の探査車」として、岩石や土壌を調べ、多くの画像を地球へ送り続けました。
第14回科学教室では火星着陸の難しさについて考えましたが、2機の着陸方法はとてもユニークでした。探査車はエアバッグに包まれた状態で火星表面に到達し、何度も跳ね返りながら減速して停止します。その後、エアバッグの空気が抜け、探査車が姿を現しました。まるでSF映画のような着陸成功だったのです。
このミッションの大きな目的は、「かつて火星に水が存在した証拠を探すこと」でした。NASAの科学者マット・ゴロンベックは、「私たちの双子の探査機は、かつて湿潤な火星が存在したことを示した最初の探査車です」と語っています。
実際にスピリットとオポチュニティは、火星に水が流れていた痕跡を示す重要な証拠を発見し、火星研究を大きく前進させました。
人類はいつの時代も、まだ見ぬ世界へ挑み続けてきました。未知の場所への探査は、私たちに新しい発見と未来への夢を与えてくれます。
【さらに詳しく】
☞「着陸から20年:NASAの双子の探査車が火星科学をどう変えたか」
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ガリレオが見つけた新しい宇宙 ― 木星の衛星の発見(1610年1月7日)
1610年1月7日、ガリレオ・ガリレイは、自ら改良した望遠鏡で木星を観測し、その近くに小さく輝く天体を発見しました。最初は恒星だと思っていましたが、何日も観測を続けるうちに、それらが木星のまわりを回る4つの「衛星」であることに気づきます。現在、これらはイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストと呼ばれ、「ガリレオ衛星」として知られています。
当時、多くの人々は「すべての天体は地球のまわりを回っている」という天動説を信じていました。しかし、木星にも衛星があるという発見は、「地球だけが宇宙の中心ではない」という新しい考え方を後押しする重要な証拠となりました。
この発見は、その後の地動説の普及につながる大きな一歩となり、人類の宇宙観を大きく変えた歴史的な出来事として、今も語り継がれています。
【さらに詳しく】
☞ NASA:410年前,「<ガリレオ>木星衛星発見」
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〇見えない地球の動きを「見える」に変えた実験
昨年出かけた国立科学博物館には、フーコーの振り子が展示されていて、その動きを見つめているうちに「地球は本当に回っている」という不思議な実感を感じることができました。
1851年1月8日、フランスの物理学者レオン・フーコーは、地球が自転していることを実験によって直接示す歴史的な公開実験を行いました。パリのパンテオンの天井から長いワイヤーで約28kgのおもりをつり下げ、振り子の振動面が少しずつ回転して見えることを示したのです。実際に回転しているのは振動面ではなく、その下で地球が自転しているため、私たちには振動面が回転しているように見えます。とてもシンプルな仕組みでありながら、地球の自転という壮大な真理を目の前で実感できるこの実験は、大きな反響を呼び、1855年のパリ万国博覧会でも再び公開されました。
日本最大級のフーコーの振り子は、弘前大学に設置されている全長45mの振り子(2020年2月現在)です。重さ50kg、直径23cmのおもりが約13.46秒の周期で揺れています。長崎県にも、長崎市の福済寺に平和への願いを込めて設置されたフーコーの振り子があります。長崎市観光課によると、現在は経年劣化のため稼働していませんが、振り子そのものは見学できるそうです。
目には見えない地球の自転を、人間の知恵と工夫によって「見える現象」に変えたこの歴史的な実験にちなみ、1月8日は「地球自転の日」とされています。身近な道具と工夫によって、宇宙規模の現象まで確かめられる――これこそが科学の面白さなのかもしれません。(2026.07.17)
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